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「ブラック依頼主」「モンスタークライアント」にならないために…… ありがちな法律違反トラブル例

 

クライアント企業がフリーランスや副業人材とトラブルになってしまうことは、しばしばあります。

 

たとえば、満足のいくものが納品されない、納期が遅れた……など、クライアント企業側が被害を受けるトラブルもあります。

ただ、一見するとフリーランスに原因があると思えるようなことも、客観的に見ると、お互いのコミュニケーションがうまく機能していないなど、クライアント側にも一定以上の責任があるケースもあります。

 

この場合は、

  • 誤解が生じないような言葉遣いに気をつける
  • できるだけ密に連絡を取る
  • できれば対面やオンライン会議でコミュニケーションを取る

といった対処をすることで、多くのトラブルが解消されます。

 

しかし、中にはクライアント企業が無意識のうちに、フリーランスを食い物にするような仕事をさせてしまうこともあります。

多くの場合、クライアント企業がフリーランスに「仕事やお金を与える」という立場となることから問題が生じています。クライアントには悪気がないことからトラブルが深刻化しやすく、やっかいなのが特徴です。

 

また、担当者は「フリーランスと対等に仕事したい」と思っていても、クライアントの企業全体として、知らず知らずのうちに、フリーランスを犠牲にしていることもよくあります。

そうなると、のちのちトラブルになったり、コンプライアンス(法令遵守)違反として社会的な評価が下がったりするので、気をつけたいものです。

 

たとえば、次のようなトラブルが発生しがちです。

 

偽装請負

偽装請負とは、業務委託契約を結んでいるはずのフリーランスに対して、実質的に雇用契約に近い労働をさせていることをいいます。

おもに問題となるのは、業務命令に服しないはずのフリーランスの労働に対して、「指揮監督」「監視」をしているケースです。

 

テレワークの場合よりも、クライアント企業のオフィスに出勤させている(客先常駐)ときに、偽装請負の問題が浮上しやすいです。

クライアントの担当者とフリーランスが同じ空間で直接にコミュニケーションを取れる環境下では、フリーランスに対する指揮監督・業務命令をしやすいからです。

 

たとえば、業務内容や配置を一方的に変えたり、どのような方法や期間を使って成果物を完成させるべきかを指定したり、残業や時短勤務を命じたり、出張や健康診断を指示したりすることは、実質的な業務命令です。

 

「もしよかったら……」と、フリーランスの許可を得るような提案の仕方をしていても要注意です。その提案を断ったとき、フリーランスにとって不利益がある(契約破棄や報酬減額、あるいは仕事を回さなかったり、話しかけても無視したりするなど)扱いをしている場合は、事実上の業務命令といえます。

 

業務命令ができるのは雇用された労働者だけであって、指揮監督や命令をされているのであれば、それはもはやフリーランスとはいえません。

 

偽装請負に該当する場合、フリーランスが違法に(厚生労働省の許可を受けずに)自分自身を労働者として供給していることになります。そうなると、クライアントとフリーランスが共に、職業安定法違反の罪に問われて、最高で懲役1年の刑に処される可能性があります。

 

フリーランスに対してどうしても業務命令を行ったり、労働時間を拘束したりしたければ、雇用契約に切り替えて、毎月定額の給与や社会保険を保証しなければなりません。

 

二重派遣

業務委託契約を結んでいるフリーランスについて、クライアント企業が別の企業に紹介し、その企業からフリーランスへ仕事を依頼をさせる(=二重派遣)ことは違法となります。

いわば、「人材の又貸し」のようになり、クライアント企業が中間に入って、報酬を搾取するような事態が横行し、フリーランスの手取り報酬が不当に少なくなるおそれがあるためです。

 

これも、職業安定法違反の罪として、最高で懲役1年の刑に処される可能性がありますので注意してください。

二重派遣は、IT業界のフリーランスSEのように、専門家の需要が高く、フリーランス人材が不足している業界で起きやすいです。

 

納品された成果物を受け取らない、突き返す、何度も修正を求める

フリーランスが期日までに納品した成果物について、クライアントが受け取りを拒否したり、返品をしたり、一方的に発注内容を変更したり、不当にやり直しを要求したりすることも、法的に問題となる態度です。

クライアントがフリーランスに対して優越する関係性を乱用することは、下請法(下請代金支払遅延防止法)に違反する行為となるからです。

 

クライアントとフリーランスの間で、法律(下請法)で定められた資本金の格差がある場合に、成果物の不当な受け取り拒否などを行えば、担当者とクライアント企業に最高で50万円の罰金刑が科されるだけでなく、公正取引委員会によってクライアント企業名が公表されることもあります。

 

報酬の未払い、一方的な減額、支払い時期を不当に引き延ばす

フリーランスが期日までに成果物を納品したにもかかわらず、報酬を支払わなかったり、減額したり、支払期日を納期から61日以上引き延ばしたりすることも、下請法に抵触します。

たとえば、4月25日にフリーランスから納品されたところ、クライアントが7月1日に報酬を振り込むのは、61日以上引き延ばしているために違法となります。特に「末日締め」にしている場合などは、納品から振り込みまでの期日が延びやすいので、下請法に触れるリスクが高まってしまいます。

 

また、支払いをそこまで引き延ばされると「これがうちの業界標準です」「他のフリーランスも同じ条件です」などといったクライアントの弁解が通用しなくなりますので、ご注意ください。