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副業の解禁や受け入れ開始時に検討すべきポイント(3)通勤手当、源泉徴収、年末調整

 

前回の記事では、本業先あるいは副業先として、社会保険や労働保険、また、安全配慮義務について理解しておくべきことについて説明しました。

最後に、本業先あるいは副業先として、通勤手当や源泉徴収、また、年末調整について理解しておくべきことについてまとめています。

 

通勤手当

通勤手当はそもそも、労働基準法などの労働関係法上、必ず支払わなければならないとされているものではありません。就業規則などで従業員に支払うことを規定することで、初めて支払い義務が発生するものです。

このため、本業先と副業先が該当従業員にどのように通勤手当を支払うのかについては、それぞれの会社での判断になります。

 

たとえば、本業先と副業先の双方が該当従業員の通勤経路を確認し、本業先から副業先、あるいはその逆の経路を含む場合には、そのことを加味したうえで支払うことなどが考えられます。

 

源泉徴収

本業先であるか副業先であるかを問わず、会社は従業員に支払う給与や賞与を支払う際には、従業員が負担すべき所得税を控除して支払わなければなりませんこれを源泉徴収と言います。本業先、副業先として注意すべき点は次のとおりです。

 

源泉徴収税額表の甲欄・乙欄の適用

従業員の給与や賞与から控除する税額は、国税庁の「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」、「給与所得の源泉徴収税額表(日額表)」、「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」によって決まります。

※参考:国税庁「令和3年分 源泉徴収税額表

 

たとえば、月単位で支払っている給与の税額については、その支払い額に応じて「給与所得の源泉徴収税額表(月額表)」によって決まります。

この際、従業員が「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している場合には、この税額表の甲欄の税額となり、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない場合には乙欄の税額となります。

※甲欄の税額は扶養親族の数が増えれば税額が低くなるように設定されているのに対し、乙欄の税額は扶養親族の数は考慮されず、そもそも甲欄の税額よりもかなり高額になっています。

 

本業先では甲欄、副業先では乙欄を適用する

本業先のほか副業先でも雇用されている人については、一般的に、収入の多い本業先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出することになっています。

このため、本業先では、上記で説明した源泉徴収税額表の甲欄の税額が、副業先では乙欄の税額が適用されることになります。

 

年末調整

上記で説明した源泉徴収とは、毎月支払う給与や、年に数回支払う賞与から所得税を控除する手続きです。

しかし、控除した所得税はあくまで仮の税額であり、年末に従業員の配偶者控除や生命保険料控除などを考慮したうえであらためて再計算することになります。これを年末調整と言います。本業先、副業先として注意すべき点は次のとおりです。

 

年末調整は本業先で行う

年末調整を行う義務があるのは、上記で説明した源泉徴収税額表の甲欄を適用することになる「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出があった従業員です。

つまり、原則として、年末調整は本業先が行うということです。

 

源泉徴収票は本業先、副業先とも交付が必要

ここで言う源泉徴収票とは、「給与所得の源泉徴収票」を指します。この源泉徴収票は、会社が1年間に支払った給与や賞与の額、また、源泉徴収税額、各種控除額などを記載した書類で、本業先であるか副業先であるかを問わず、従業員には必ず交付しなければなりません。

 

副業先としては、該当従業員の年末調整を行っていないことがわかるように、「摘要」欄には「年調未済」と記入し、支払った給与やその他の収入と合わせて20万円を超える場合には、自身で確定申告が必要であることを説明しておくのが親切です。

※参考:国税庁「給与所得の源泉徴収票等の交付義務

 

まとめ

自社の従業員に副業を解禁したり、本業がある者を受け入れる場合の通勤手当や源泉徴収、また、年末調整をどのように考えるのかについては、基本的には副業先が注意しなければならないことが多いと言えます。

副業先としては、原則として、該当従業員の年末調整を行う必要はありませんが、通勤手当をどのように支払うのかを明確にし、源泉徴収おいては、源泉徴収税額表の乙欄を適用することに注意しなければなりません。

 

 

■この記事を書いた人
人事・労務系ライター 本田 勝志(ほんだ かつし)
中央省庁や企業(労務担当)、社会保険労務士事務所での勤務を経て、現在は人事・労務系ライターとして各種HR系サイトの記事執筆に携わる。 社会保険労務士有資格者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士