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システム・ソフトウェア開発の委託契約でトラブルになる3つの原因とは?

 

システム・ソフトウェア開発の委託契約は、各種の業務委託契約の中でも契約書の作成や交渉、締結が難しい契約の1つと言われています。

その理由は主に2つで、システム・ソフトウェア開発が多くの工程を段階的に進めていくものであること、また、その作業の内容などは随時変更が必要になるからです。つまり、このことを十分に理解したうえで契約を締結しなければトラブルにつながってしまうというわけです。

そこでこの記事では、システム・ソフトウェア開発の委託契約でトラブルになる原因にはどのようなものがあるのかについて説明していきます。

 

システム・ソフトウェア開発の委託契約でトラブルになる原因とは?

システム・ソフトウェア開発の委託契約でどのようなトラブルがあるのかについては、経済産業省が2010年3月に「情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集」というものを公表しています。この事例集では、トラブルの原因は大きく分けて次の3つに分けられるとしています。

 

  1. 正式契約前の作業開始
  2. 作業内容に不適合な契約形態
  3. 契約の不備

 

それぞれについて、このあと詳しく説明していきます。

 

正式契約前の作業開始

システム・ソフトウェア開発の委託契約において、ベンダー(受託側)がユーザー(委託側)と正式契約を締結する前に作業を開始することがあります。しかし、正式契約に至らなかった場合はベンダー(受託側)がすでに使ってしまった費用(人件費も含む)などをめぐってトラブルになります。

 

そもそもルールどおり正式契約を締結してから作業を進めれば良いのでは? と思われるかもしれませんが、システム・ソフトウェア開発は最初に説明したとおり複雑な作業であることから契約書の作成や交渉に時間がかかります。

ベンダー(受託側)としては、正式契約を締結してから作業を進めていたら、納期に間に合わなくなる可能性がありますし、正式契約の締結前にある程度作業を進めておけば、ユーザー(委託側)は他のベンダー(受託側)に乗り換えられなくなるという狙いもあります。また、ユーザー(委託側)としても期日までにシステム・ソフトウェアを完成させて欲しいため、正式契約前の作業開始を黙認することもあります。

 

ベンダー(受託側)、ユーザー(委託側)ともにメリットがあり、頻繁に行われているからこそ、トラブルにもなりやすいといえます。

 

※上記の予防策については以下の記事をご確認ください。(3月公開予定)

「システム・ソフトウェア開発の委託契約におけるトラブルの予防策①迅速な契約の締結」

 

作業内容に不適合な契約形態

システム・ソフトウェア開発では、「要件定義」、「システム設計」、「ソフトウェア開発」、「ソフトウェア運用準備・移行支援業務」など多くの工程を段階的に進めていきます。

 

すべての工程について一括して契約を締結することもありますが、一般的には、

  • 何かしらの成果物を伴う工程:請負契約(ベンダー(受託側)は仕事を完成させる義務がある)
  • 作業のみを行う工程:準委任契約(原則としてベンダー(受託側)に仕事を完成させる義務はない)

と、工程ごとに別の契約を締結することになります。

 

仮に、成果物を伴う「ソフトウェア開発」の工程を請負契約ではなく準委任契約としていたり、あるいは、請負契約であるのか準委任契約であるのかが契約上、明確になっていなかったりすると、ベンダー(受託側)がそのソフトウェアを開発できなかったときに報酬の支払いなどについてトラブルになります。

 

※上記の予防策については以下の記事をご確認ください。(3月公開予定)

「システム・ソフトウェア開発の委託契約におけるトラブルの予防策②作業内容に合った契約形態の選択」

 

契約の不備

システム・ソフトウェア開発は上記で説明したとおり複雑な作業であり、完成させるためにはユーザー(委託側)の協力が必須となります。このため、契約上はベンダー(受託側)の業務範囲完成基準、ベンダー(受託側)とユーザー(委託側)の役割分担などを明確にしておかなければなりません。

また、実際に作業を進めていく中で、作業内容や費用などについて変更が必要になることもありますので、その変更手続きについても明確にしておく必要があります。

 

これらに対応できていない契約を締結してしまうと、契約の不備となりトラブルにつながってしまいます。経済産業省の「情報システム・ソフトウェア取引トラブル事例集」では、トラブルが起こりやすい次の点については特に明確にしておくべきとされています。

 

  • 業務範囲
  • 完成基準・検査
  • 役割分担・プロジェクト推進体制
  • 知的財産権
  • 第三者が権利を有するソフトウェア
  • 変更管理

 

※上記のうち、「業務範囲」、「完成基準・検査」、「役割分担・プロジェクト推進体制」、「変更管理」の明確化については以下の記事をご確認ください。(4月公開予定)

「システム・ソフトウェア開発の委託契約におけるトラブルの予防策③業務範囲の明確化」

「システム・ソフトウェア開発の委託契約におけるトラブルの予防策④完成基準・検査の明確化」

「システム・ソフトウェア開発の委託契約におけるトラブルの予防策⑤役割分担・プロジェクト推進体制の明確化」

「システム・ソフトウェア開発の委託契約におけるトラブルの予防策⑥変更管理の明確化」

 

まとめ

システム・ソフトウェア開発の委託契約でトラブルになる3つの原因、「正式契約前の作業開始」、「作業内容に不適合な契約形態」、「契約の不備」については、該当することがないようにそれぞれ対策を講じなければなりません。

各対策については他の記事で説明していますが、共通して言えることは、適切な対策を講じるためには、システム・ソフトウェア開発が多くの工程を段階的に進めていくものであること、また、作業内容や費用などは随時、調整が必要になることなどを十分理解しておく必要があります。

 

 

■この記事を書いた人
人事・労務系ライター 本田 勝志(ほんだ かつし)
中央省庁や企業(労務担当)、社会保険労務士事務所での勤務を経て、現在は人事・労務系ライターとして各種HR系サイトの記事執筆に携わる。 社会保険労務士有資格者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士