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名ばかりフリーランス(1)自社の都合のいいように業務委託契約を締結していませんか?

 

業務のアウトソーシングを目的として、フリーランスなどに業務を委託することが増えていますが、フリーランスは雇用契約を締結している自社の従業員とは根本的に立場が異なりますので、同じように扱わないように注意しなければなりません。

この記事では、そもそもフリーランスとはどのような立場であるのか、また、自社の従業員とどのような違いがあるのかなどについて解説します。

 

そもそもフリーランスとは?

まずは、そもそもフリーランスと呼ばれる方がどのような立場の方であるのかについて説明します。

 

フリーランスの定義

「フリーランス」に明確な定義はありませんが、一般的には、特定の会社や団体などと雇用契約を締結せず、独立して業務を請け負っている方(あるいはそのような働き方)のことを言います。

なお、会社に雇用されながら、副業として自身の専門業務を請け負っている方もおられますが、このような方は会社員兼フリーランスであると言えます。

 

個人事業主との違い

フリーランスに似た用語として「個人事業主」がありますが、この「個人事業主」は、法人事業主に対する税務上の区分を表す用語であり、本来的は税務署に開業届を提出している方のことを指していると言えます。

フリーランスの中には開業届と提出していない方もいますし、個人事業主ではあるものの飲食店や小売店などを経営されている方もおられますので、必ずしもフリーランス=個人事業主ではないと言えます。しかし、業務を委託する企業側から言えば、どちらに業務を依頼するにしても外部の業者であることに変わりはありません。

 

フリーランスと雇用契約を締結している従業員の違い

次に、フリーランスと雇用契約を締結している従業員の違いについて説明します。

 

フリーランスは労働基準法上の労働者ではない

フリーランスは、労働基準法上の労働者(職業の種類を問わず、事業または事務所に使用される者で賃金を支払われる者)に該当しないため、労働基準法上の労働者としての保護を受けることができません。また、健康保険法や厚生年金保険法上の被保険者とならず、労働者災害補償保険法上の給付も原則としては受けることはできません。

 

業務環境の違い

フリーランスと、会社と雇用契約を締結している従業員とでは、業務環境において次のような違いがあります。

比較項目

フリーランス

従業員

労働時間

自身で管理

1日8時間・1週40時間(原則)

休憩

労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上

休日

毎週1回以上(原則)

報酬・賃金

業務委託契約によって決定

雇用契約によって決定

社会保険

医療保険:自身で国民健康保険に加入

年金保険:自身で国民年金に加入

医療保険:会社で健康保険に加入

年金保険:会社で厚生年金保険に加入

※各保険料は会社と従業員で折半

労働保険

雇用保険:加入不可

労災保険:原則加入不可(一人親方などは加入可)

雇用保険:会社で加入

労災保険:会社の従業員として適用

※雇用保険料は会社と従業員で一定割合を負担(会社の負担割合の方が多い)、労災保険料については会社の全額負担

 

 

フリーランスの取り扱い上の注意点

最後に、業務委託契約を締結したフリーランスの取り扱い上の注意点について説明します。

 

委託した業務に関して指示はできない

業務委託契約を締結したフリーランスがどのように業務を進めるのかについては、その一切をフリーランスに任せなければなりません。

委託側の企業がフリーランスに対して業務上の指示はできませんし、仮に自社に常駐させて業務を行ってもらう場合でも、出社・退社時間を指示したり、残業を求めたりなど労働時間を管理することもできません。委託側の企業にフリーランスに対する指揮命令権はないということです。

フリーランスを自社の従業員のように扱っていると、偽装請負とみなされますので注意が必要です。

 

不当に扱うと、下請法や独占禁止法に抵触する可能性がある

フリーランスは下請事業者として、また、取引の相手方として、下請法および独占禁止法によって保護されています。

下請法では、親事業者が遵守しなければならない事項が規定されており、独占禁止法では、立場的に優位にあることを利用して不公正な取引をすることが禁止されています。

たとえば業務を委託する企業が、フリーランスに対して次のような不当な行為をすれば、下請法または独占禁止法に抵触する可能性がありますので注意が必要です。

 

  • 通常支払われるべき報酬を著しく低く設定すること。
  • 報酬の支払期日を著しく遅く設定すること。※
  • 報酬の支払いを遅延させること。
  • 報酬の減額を要求すること。
  • 成果物の受領を拒否すること。
  • 成果物に関する権利を一方的に取り扱うこと。 など

※下請法上は、報酬の支払期日について、成果物の受領日から60日以内、かつ、できる限り短い期間内とすることが求められています。

 

下請法では、対象となる親事業者と下請事業者の資本規模(親事業者については1千万円超)や取引内容などが定められていて、上記のような問題があったとしても適用されない場合もありますが、そのような場合には独占禁止法上の問題として扱われます。

 

まとめ

フリーランスに業務を委託する場合、そのフリーランスに対する指揮命令権はないこと、また、立場的に優位にあることを利用して不当な契約を強いることはできないことを理解しておかなければなりません。

フリーランスと業務委託契約を締結しながら、従業員のように指揮命令下に置くと、偽装請負とみなされますし、不当な契約を強いると、下請法または独占禁止法違反となる可能性がありますので注意しましょう。

 

■この記事を書いた人
人事・労務系ライター 本田 勝志(ほんだ かつし)
中央省庁や企業(労務担当)、社会保険労務士事務所での勤務を経て、現在は人事・労務系ライターとして各種HR系サイトの記事執筆に携わる。 社会保険労務士有資格者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士