フリーランスに一部の仕事を外注している企業の中には、「納期を守ってくれない」「締め切りを設定しても、よく遅れる」外注先に悩まされている場合も少なくありません。
このようなフリーランスに対して、「納期を守らないなら無条件で契約を切る」というやり方もあります。
そのプロジェクトで、そのフリーランスの仕事に関する「納期が間に合うのが最優先」なら、それでも構わないかもしれません。
ただ、報酬に掛けられる予算と、できあがってくる成果物の品質をてんびんにかけて、品質が満足できる水準のものであれば、そのフリーランスと簡単に契約を切ることができないこともあるでしょう。
そこで、納期が遅れがちだけども、納めるもののクオリティが一定以上で、契約を切るのが忍びないフリーランスに関する対策についてお伝えします。
納期がある理由(重要性)を伝える
ただ単に、クライアントが納期を設定すると、その納期の重要性がフリーランスに伝わらない場合があります。
設定している納期が遅れてしまうと、どのような影響が生じるのか(社内外の人々がどのように困り、迷惑を被るのか)を具体的に伝えましょう。
社会人としてまっとうな感覚を持っているフリーランスであれば、そのひとことだけで、あなたの会社の優先度を上げて、納期をできるだけ守ってくれるようになるはずです。
ただ、たとえば「今月は年末進行(他にも夏休み・大型連休など)があるので、早めにいただきたい」などと、まるでクライアント企業の都合を呑むのが当たり前な伝え方をすると、フリーランスの中には「あなたたちが年末年始に長期休暇をとりたいせいで、こっちが休暇を取れない」と感じて、不快に受け取ってしまう人もいます。
ひとこと「申し訳ありません」「ご協力をお願い致します」「今後、○○さんが長期休暇を取りたいときは、こちらもご協力いたします」などとメールに書き添えるだけで、印象はずっと違います。
また、納期が遅れた場合は、原稿料の振り込みが遅れるなど、フリーランス自身の不利益につながることをあらかじめ伝えることも、納期の重要性を思い知らせるのに有効といえます。
余裕をもって納期を設定する
本当に遅れたら困るタイミングよりも、もっと早い時期を納期としてフリーランスに伝えることは、かなり有効です。
ただし、納期を早めることは、クライアントの会社にとっては「余裕」ですが、フリーランスにとっては「負担」となります。
作業量の多い仕事で、かなりの労力をその仕事に集中して投入しなければならない場合、フリーランスに相当な負担がかかってしまいますし、クオリティの低いまま提出されることもありえます。
自己都合で一方的に、納期を早めることは避けなければなりません。
また、他の言動などで「本当の納期」が存在することがフリーランスにバレてしまった場合は、かえって納期が軽視されてしまうおそれもあるので、注意しましょう。
フリーランスのほうに納期を設定させる
日程に余裕のあるプロジェクトであれば、あえてフリーランスの方に納期を設定させることも有効です。
自分で設定した納期を自分で破ることは、仕事に対する自己評価が下がり、自分のことが嫌いになりそうな、恥ずかしく思うような行為です。
自分自身で発言や行動をしたことに対して、後でそれと矛盾する行動を取ることに、人は心理的な抵抗をおぼえますから、それを利用します。心理学用語で「一貫性の法則」といわれるものです。
それでも納期に遅れてしまうときには、自分自身で設定した納期であることをさりげなく伝えるため、その当時のメールに返信し、文末にそのメールのコピー(引用文)が入るようにしておく方法もあります。
さみだれ式に分割して受け取る(分割納品)
納期までにある程度の期間を要して、ボリュームの大きな仕事では、その間に中間納期をいくつも設定して、成果物を分割して受け取るようにするのも有効です。
たとえば、書籍の原稿のライティングであれば「第1章は○月○日、第2章は○月△日にください」と提案することもできます。
ただ、その中間納期はクライアントが一方的に設定せず、フリーランスの意見も聞くようにしましょう。人によって繁忙期や閑散期がまちまちですから、一定間隔で、一定の分量の成果物を納品することが難しい場合が多いからです。
なお、ソフトウェア開発など、フリーランスの制作する成果物を分割して受け取ったところで、全体として動かなければ意味がないケースもありえますので、その場合に分割納品を使うことは難しいです。
また、成果物には現れない事前の準備作業やリサーチ作業などに多くの時間が取られるため、仕事が着々と進んでいることを成果物の途中経過で示せないようなタイプの仕事もあります。その場合も、仕事の内容や性質として分割納品は向いていませんので、フリーランスとよく相談するようにしていただきたいです。