株式会社masterpeace(マスターピース)ではオンライン出版、コンテンツ企画、教育事業の立ち上げ支援など「伝えることを通じて、人や社会にいいコトのお手伝いをする」ことを目指した事業を展開しています。
特徴的なのが、パートナーと呼ばれる外部の人たちと一緒にプロジェクトを進めていること。ほとんどのプロジェクトでパートナーさんが参加しているそうです。
このような仕事の進め方、働き方はどのように生まれたのでしょうか? また、外部のパートナーさんと仕事をする場合、どうやったら上手くいくのでしょうか? 採用の方法やコミュニケーションで心がけていることなどを、代表の窪田さんにお伺いしました。
もくじ
会社という箱にではなく、やりたいことのために集まった
――定番の質問になってしまうのですが、会社を立ち上げたきっかけや経緯を教えていただけますか?
窪田 篤さん(以下、窪田):
実は、会社を立ち上げよう!と思ってつくった会社ではないんです。
転職を考えていた時に、たまたまご縁があって出会った4人の先輩から新規サービス(今もやっている出版事業)を立ち上げるという話を聞いてプロジェクトに参加したのがきっかけです。
今は弊社役員でもある、その先輩達は当時からそれぞれが自身でいくつかの法人を持って事業をやっていたんです。だから、お金のためというよりは「せっかくこのメンバーでやるのだから、おもしろいことをしたい」という想いで集まっている感じでした。
なので、メンバーが活動する枠組みという意味で会社という「箱」は必要ではあったのですが、当時は、会社を続けることを目的にはしていませんでした。
最初はB2Cサービスを中心に事業をスケールさせようとがんばっていたのですが、途中で当初の路線ではなかなか難しいことがわかって。正直に言うと事業を続けていくことをあきらめそうになったこともありました。箱を続けること、事業をやることを目的とはしていなかったため、結構迷っていたんですね。
そのときに、つながっていたクライアントやパートナーさんの大切さに改めて気づく瞬間があって、ご縁のある皆さんがやろうとしている社会課題の解決や目標達成を支援したいと思うようになったんです。事業のスケールから、やっていることの価値に目的がシフトしたような感じです。
こうした経緯もあって、会社という箱が大事なのではなく、やるべきこと/やりたいことがあるから会社をやっている状態を維持することが大切なんじゃないかと思うようになりました。
採用基準は、やさしい人!?
――プロジェクトからスタートしたということは、もともと外部の人の集まりだったんですよね。
窪田:
そうですね。だから外部の人と一緒に仕事をするとか、採用するということに、抵抗感はまったくありませんでした。
最初の1〜2年は正社員が一人もいなかったんです。プロジェクトは役員メンバーと外部のパートナーさんで回して、制作業務や事務作業なんかをアルバイトメンバーや学生さんに手伝ってもらっていました。
――ほぼすべてのプロジェクトを外部の人と一緒にやっているというのは、単純にすごいなと思います。今はパートナーさんだけでなく、社内のメンバーも採用していると思うのですが、採用基準のようなものはあるのでしょうか?
窪田:
そうですね…。実はWatedlyに「やさしい人募集」というキャッチコピーで求人を出していたことがあります(笑)。
■求める人物像「優しい人」 クライアントに優しい。(クライアントのパートナーになれる) 代表含めて現メンバーがこれらを達成できているわけではありませんが、こんなことを求めるチームに共感してくれる方だと、私たちも安心です。
なんだかんだで「優しい」は大切だなぁと感じております。
著者に優しい。(伝えたいことをしっかり受け止められる)
読者に優しい。(読む人が読みやすいコンテンツが作れる)
社会に優しい。(やって意味のある事業を求める志向)
社内メンバーに優しい。(なんだかんだで、チームで一緒に働くので優しい人が良いなぁ)
たとえば、専門用語を使わずに上手く話してくれたり、わかりやすく依頼をしてくれる人だといいなと。こういう意味で「やさしい人」だとやりやすいんじゃないかと思ってます。
あとは、カッチリと固まっていない状態のお仕事をするのがイヤじゃない人。前例のないプロジェクトだと、どうしてもスケジュールや業務内容が曖昧になることが多いので、ここがストレスにならない人がいいですね。そろそろお気づきかと思いますが、僕自身や社内メンバーがゆるめの雰囲気だというのも理由のひとつだったりします。
その一方で、お客さんや著者さんに対してプロとしてしっかり対応できることも一つの優しさだと考えて書いていました。
――経験やスキルなど数字で表せる実績よりも、雰囲気が合うとかって意外と大事だったりしますよね。そのほかに採用で重視していることはありますか?
窪田:
採用するときは、役割やポジションでざっくりと(以下のような感じで)切り分けて考えています。
●サポート人材:コンテンツ作成、バックオフィスなど。社内メンバー=中の人
●パートナー:一緒に企画や事業をつくれる人
専門職の採用では、仕事のスキルやコミュニケーションの柔軟さを見ています。サポート人材の場合は、ほぼ人柄ですね。テレワークができるとか最低限のITスキルがあればOKです。
難しいのがパートナーです。柔軟性があって融通がきくという点がベースにあって、自分で何かやっている人だといいですね。「言っていただければ、なんでもやります」ではなく、企画を持ち込んで「一緒にやりましょう!」みたいなイメージ。
さらにいえば「3年後にはこういうことしたいよね」みたいな話ができる人だと最高ですね。
――スキルにせよ人柄にせよ、履歴書や面接だけでは判断が難しそうですね…。
窪田:
そうですね。専門職は基本的にスキルで判断しますが、エンジニアはともかく、ライターや編集者は成果物を見てもスキルなんて正直、判断できないんです。
なのでポートフォリオとか面接では、ほとんど何も判断できていません。話してみてコミュニケーションの問題がなければ、いったんトライアルでお仕事をご一緒することにしています。
そこで「良さそうだな」と感じれば継続してお願いするし、「ちょっとやりづらいかも」と思えばやめる。究極のところ、一緒にやってみないとわからないところが多いですから。
ただし「判断する」というのは、僕だけの話ではありません。仕事の依頼を受けていただいた側のみなさんにも「一緒にやれそうかどうか」という点はかならず確認いただいています。つまり、お互いに適性を判断するということですね。
外部のパートナーさんと上手に仕事を進めるには、6つの「ない」が大事
――記事制作やLPのデザインなど単発の依頼ではなくプロジェクトを一緒にやるとなると、コミュニケーションの取り方も大事なのかなと思うのですが…外部のパートナーさんと付き合う上で、なにか工夫されていることはありますか?
窪田:
社内メンバーに対する接し方との違いとして感じることは、評価しない、モチベーションコントロールしない、という点はあると思います。
――それは珍しいですね。
窪田:
そうなんですかね? 職種やお仕事の内容には違いはありますが、ご一緒いただけるパートナーさんについては、基本的にすべての人が「お仕事をするプロ」だと考えてはいるので、余計な口を出さないように気をつけています。そこはパートナーさんにお任せしている部分ですから。
表現がきつくなってしまいますが、最終的なお互いの評価って(今後も)仕事を一緒にやるか/やらないかでしかないと思っているんですよね。
モチベーションコントロールも、あえてしないですね。「お互いに一緒にやりたいと思っているからご一緒している」という前提があって、どちらかがコントロールして続けるようなものではないかなと思っています。ただ、お互いに今のお仕事に関する意思を定期的に確認するのは大事ですよね。ほんとはやめたいって思ってるのにずるずるやり続けちゃうのは、僕たちにとってもパートナーさんにとっても不幸ですから。
「しない」という意味でいうと、人材教育もしないですね。社内のメンバーであれば、経験や職域に応じて、お仕事の仕方を含めて人材育成を組み込んでいますが、パートナーさんの場合には、プロジェクトをうまく進めるための情報共有は行いますが、いわゆる「教育」は提供していません。これも「プロとしてのお付き合い」が前提にあるからです。
ただし、スキルやノウハウの共有は積極的にしています。その人の成長のために一方的に教えるというようなことはしていない=人材教育はしていないのですが、お互いに高め合うみたいなことはこれからもやっていきたいですね。
そのほか業務上の連携などは計画もたてて積極的に行っていますが、ご本人のお仕事の進め方については、基本的には変えようとしないようにしています。
フリーランスの教育は誰がやるのか問題
――教育というところでいうと、パートナーさん、つまりフリーランスや業務委託の方の育成って、どうしたらいいんですかね? 副業の解禁や自由な働き方をする人が増えると、こうした問題が大きくなってくるのではと思っているのですが…。
窪田:
むずかしい問題ですよね。業務委託で契約した会社が育成するインセンティブは働きづらい場合が多いでしょうし。ただ、今の時代、やろうと思えばインターネット上にも豊富な情報があり、個人でいくらでも学べます。そういった自助が今後も中心になるとは思います。
ですが一方で、とくに若い人は「なにがわからないのかわからない」状態だと思いますし、フィードバック(評価)によって成長するという側面もあります。
ジャストアイデアですが、個々の会社でなく全体で教育コストを負担する仕組みがあるといいのかもしれないですね。業務委託の報酬のうち数%を税金として集めて教育機会をつくるとか…う〜ん、やっぱりむずかしいですね、答えがでないです。
――わたしも答えが出ていないのですが、考え続けていきたい問題ですよね。本来のインタビューの目的とは外れてしまった部分もありますが、快くお答えいただき、ありがとうございました!